小竹裕一〈世界・旅のアラベスク〉その3
冬休みも明け新年がやってまいりましたが皆さんいかがお過ごしですか?実家でだらだら過ごしてしっかり正月太りした筆者も、そろそろスッキリしてきていたらいいなと思います!!笑
さて、やってまいりました小竹先生の旅行記、その3!今セメスターは授業のない先生ですが、素晴らしい記事が届きましたよ!!
今回は、『マドリードからバルセロナへ 〜世界の理髪店あれこれ〜』です!!
前回の『ポーランドに「床屋」はあるのか?! 〜世界の理髪店あれこれ〜』の続編になっています。
まだ読んでないって方は是非こちらから!!
その1『ぐぁんばれ、マック! 〜海外旅行の〈駆け込み寺〉・マクドナルド's〜』
その2『ポーランドに「床屋」はあるのか?! 〜世界の理髪店あれこれ〜』
マドリードからバルセロナへ
〜世界の理髪店あれこれ〜
〈カタルーニャ美人たちと共に〉
わたしはヨーロッパがけっこう好きで、これまで何十回も旅してきているのだが、どうしたわけかスペインには2度しか行っていない。なぜか……と考えて、原因がすぐわかった。
あれはたしか十数年前のことだった。偉大な画家・ピカソや建築家・ガウディをはじめとして、ものすごく独創的な芸術家を多数排出しているスペインの風土を、自分の眼で見たいと思った。
そこで、まずその首都たるマドリードに足を運んだわけだが、到着した翌日、とんでもない”事件”に遭遇してしまったのだ。
わたしは自他共に認める「海外旅行の鬼」として、ヨーロッパやアメリカへ出かけようとしている友人や知人に、いつも「時差ボケがかならずあるので、到着した日とその翌日はとくに気をつけたほうがいい」と口をすっぱくしてアドバイスをしているのだが、恥ずかしながら自分自身がその鉄則を忘れてしまったらしい。
それはいわゆる「抱きつきスリ」の一種だった。ガーンと一撃をくらわせて、相手がおどろきあたふたしている間に、ズボンのポケットから財布をぬきとって逃げる、という手口だ。
わたしは中学、高校と剣道をやっていたので、とっさに男の手をはたき、なんとか財布を守ることができた。
このスペイン人の青年は悪びれる様子もなく、ヘラヘラ笑いながら逃げていった。今思えば、彼がナイフをもっていなかったのが不幸中の幸いだった。
この「マドリード・抱きつきスリ事件」のあと、ホテルにもどって、スペインの旅行ガイドブックをくわしく読んだところ、驚くべきことが書かれてあった。
それは、ヨーロッパを旅行する日本人観光客が被害にあう窃盗事件のほぼ半分がスペインで起こっており、とくにマドリードはドロボーやひったくりが多いので、街を歩くさいにはカバンやハンドバックをもたないほうがいい、という内容だった。
これで、わたしのスペインという国への印象は決定的にわるくなった。それ以来、スペインへ足を向けることはまったくなくなったわけである。
ところが、つい2年前、スペイン南部のバルセロナへの安い切符がたまたまあったことから、フッとスペインへもう一度行ってみようという気になった。
わが人生二度目のスペイン。バルセロナに降り立ち、市街のあちこちを歩いて、目を見張った。真新しいトラム(市電)が走り回る町は、どこにもゴミが落ちていない。治安もよくて、街を安心して歩ける雰囲気なのだ。
1週間滞在しているうちに、このバルセロナにはいろいろな面で「自分の町をよりよくしよう」という住民のつよい意志が感じられた。町中そこかしこに花が咲いており、どこへ行っても花屋がある。
町の目抜き通りたるランブラス通りでは、どんな苦しい時代にも花屋と本屋は決して消えなかったことが、”バルセロナっ子”の自慢の種になっているという。
〈たしか、以前バルセロナ・オリンピックもあって、成功していたよナ……〉と思い出しながら、旅行カバンの底から持参のバルセロナに関する本をとり出して、読んでみた。
なんと当地で話されている「カタルーニャ語」というのは、スペイン語よりもお隣・フランスのオック語やプロヴァンス語に近く、バルセロナの大学に入学したマドリードからの学生たちは、カタルーニャ語をマスターするために1年間勉強しなければならないという。
鉄道の駅へいってみると、「トイレ」などの表示板には、カタルーニャ語、スペイン語、そして英語の3つの言語が連記されていた。また、街の大きな建物には、黄色と赤の細いストライプから成るカタルーニャの旗がたくさんはためいていた。
土地の人にきくと、イギリスのスコットランドと同じように、カタルーニャ州もスペイン国から独立しようという気運がつよいのだという。
さて、投宿したホテルの近くに、新しくてこぢんまりとした理髪店があった。道路側の壁がガラス張りになっており、数人の男性理髪師がのんびりとお客の髪をかっている。
外からのぞいて〈アッ……〉と思ったのは、お客が身につける散髪用の前かけだ。日本ではふつう白い布が多いけれど、バルセロナのものは鮮やかな真紅だった。(前回の写真参照!)
この赤い前かけを両手でもって、ヒラヒラさせれば、闘牛用につかえそうだ。じっさい、かつてバルセロナにも大きな闘牛場があったという。
この床屋を見つけた日は、いろいろと忙しかったので、翌日の午後2時過ぎに頭をかってもらいに足を運んだ。
ところが、意外なことにその店は閉まっていたのだ。〈エッ、今日は平日なのに……〉といぶかしく思いながら、入口のドアにかかった営業時間の札を見て、目が点になった。
午後1時からまるまる2時間「昼休み」で、3時から夜7時までが午後の営業時間だという。おそらく、床屋のおじさんたちは自分の家に帰って、ゆっくりランチや「シエスタ(昼寝)」を楽しんでいるのだろう。
そう、なんのことはない、バルセロナの床屋は何から何まで「スペイン風」だったのである。
(次回につづく)
旅行作家 小竹裕一
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