旅行作家小竹裕一の〈世界・旅のアラベスク〉

さて近頃は寒くなってきましたが、熱〜い新連載です!!

突然ですがみなさん、こちらの先生はご存知ですか??

異文化間コミュニケーションの授業でおなじみ、APUの小竹裕一先生です!!


ある日先生と話していた筆者、、、

すると小竹先生が突然、Beppaperに私の旅行記を載せたい!とおっしゃって下さったのです!!

なんでもご自身の海外経験での熱い思いを記事にしたいのだとか。


小竹先生は授業を受けた人なら誰もが知る海外旅行の鬼!!さらにあのユニークな授業からもわかる超面白い先生!!

そんな先生が海外で経験したことや感じたことを「旅行作家小竹裕一」として書いてくださるなんて絶対面白い!

ということで早速お願いしちゃいました^^


旅行作家小竹裕一の、世界・旅のアラベスク。第一弾は「ぐぁんばれ、マック!〜海外旅行の〈駆け込み寺〉・マクドナルド's〜」です!!


ぐぁんばれ、マック!

 〜海外旅行の〈駆け込み寺〉・マクドナルド's〜


 今日本のマクドナルドはかつてない苦境に直面している。ことの発端は、2014年の7月にナゲットの原料たる鶏肉の仕入先だった中国・上海の工場で、使用期限切れの鶏肉を使っていたのが発覚したことだった。

 食の安全に関してとりわけ敏感な日本の消費者は、このマックの不始末にマユを寄せ、翌8月の既存店売上高は25.1%も減少した。

 さらに、2014年末から去年初めにかけてマック製品への異物混入のニュースが相次ぎ、去年1月の売上げ高は前年同月と比べて、ついに38.6%ダウンしてしまった。

 この結果、2014年12月期の営業損益は67億円の赤字となり、これは1983年以来41年ぶりの赤字決算だという。(2015年2月6日付・朝日新聞より)

 こうしたマクドナルド苦境のニュースに接して、いまわたしは複雑な思いでいる。「使用期限切れの鶏肉使用」や「異物混入」はむろんケシカランことであり、マクドナルドの経営陣には猛省をうながしたい。が、一方で、マックにはなんとかこの危機を乗り切り、立ち直ってもらいたいという気持ちも小さくないのだ。

 もちろんそれは、わたしがマクドナルド社の株をもっているからでは決してなく、これまでの海外旅行の中でマックに何回も助けられて、感謝の念をずっといだきつづけてきたからである。


 あれはたしか、5、6年前の春先、3月の上旬ごろのことだったと思う。わたしは北イタリアの中核都市・ミラノから急行列車に乗って、3時間ほどで水の都・ヴェネツィアに到着した。

 ふつうの駅前からタクシーをホテルへ向かうのだが、ヴェネツィアのサンタ・ルチア駅前にはタクシーはおろか、バスや車のたぐいはいっさい存在しなかった。水中に杭をたくさん打ち込んで造り上げた人工の海上都市なので、どこかへ行くには徒歩か、網の目のように入りくんだ運河を走る水上乗り合いバス(ヴァポレット)に乗るしかないのだ。

 駅の近くの小さなホテルに投宿したわたしは、翌朝はやくあまりの寒さに目を覚ました。あわてて窓の外を見ると、なんと真白い雪が舞っていた。前年の同じ頃フィレンツェを旅したときには、3月でもけっこう暖かくて、さすが南欧・イタリア!と思ったのだが・・・・・。

 ホテルの食堂でかんたんな朝食をとって、いざ外へ出ると、その日2度目の驚きが待っていた。町をぞろぞろ歩いているヨーロッパ人の観光客が、皆いちように冬用の厚いコートを着こんでいるのだ。彼らはどうやら出発前に天気予報をチェックして、この年の異常な寒波の襲来に備えてきたようだった。

 うすいスプリング・コートしか持っていないわたしは、ブルブルふるえながらヴェネツィアの中心たるサン・マル孤児院をめざすことにした。


 かつて名高いヴェネツィア商人が世界を股にかけて活躍し、栄華を誇った都市国家だけあって、ヴェネツィアの町は中世に建造されたゴシック様式の壮麗な教会や色大理石をふんだんにつかったすばらしい建物がいまも残っている。

 その素敵な街並みをひとりで堪能しながら歩き回っているうちに、自分が道に迷ったことにハタと気がついた。ホテルでもらった観光地図はもっていたのだが、ヴェネツィアの街路はちょうど日本の城下町のようにくねくね曲がっていて、目指す方向へ直進で進むことができない。

 地元の人に道を聞こうとしたが、おりからの路上に出ている人はほとんど全くいない。ホテルを出てから、もうすでに2時間以上歩いているので、身体のシンまで冷えきって、寒いことこの上ない。

 他の場所なら、手を上げてタクシーをつかまえすぐホテルにもどるのだが、ここにはタクシーの「タ」の字もないのだ。このときつよく思ったのは、〈熱いコーヒーをがぶがぶ飲んでとにかく身体をあたためたい〉ということだった。しかし、ヴェネツィアもほかのイタリアの町と同様に、喫茶店というものがない。「バール」というスナックや軽食を出す店があるものの、コーヒーはごく小さなカップで飲むエスプレッソばかりである。

 こうして疲れと寒さでどうにもならなくなっていたわたしの前方に、「M」の大きな字が見えたときの悦びは筆舌に尽くしがたかった。残る力をふりしぼって、なんとかマクドナルドにたどりつき、暖房の効いた店内で「カフェ・アメリカーノ(アメリカン・コーヒー)をのどに流しこんだときの至福は、今でも忘れられない。

 雪のヴェネツィアで、行き倒れになりそうだったわたしは、マックによって助けられ、救われたのである。


 さて、ヨーロッパを旅する日本人観光客にとって、頭痛のタネのひとつはトイレの問題だろう。日本なら、駅やバスターミナル、公園、喫茶店、パチンコ屋、スーパ、デパートなど、そこかしこに用を足すところがあるのだが、どうしたわけかヨーロッパの町でトイレを見つけるのはひと仕事なのだ。

 とりわけフランスなどでは、いったんホテルを出ると、トイレを使えるのは高級レストランぐらいなので、トイレ問題はグループ・ツアーの添乗員にとって最重要課題となる。

 朝ベルサイユ宮殿へ向かうチャーター・バスに参加者全員がそろった時点で、ガイドの人は必ずこう言って念を押すという。「皆さん、トイレの方は大丈夫ですか。いま出しておかないと、ランチのレストランまでトイレが使えません。これは決して笑い事ではないのです!」

 フランスが誇るベルサイユ宮殿では、かつて夜ごとに舞踏会が催され、着飾った紳士淑女が華やかな社交を楽しんだといわれるが、この壮大な宮殿にトイレがひとつもなかったことが「世界の七不思議」のひとつに数えられているのだ。

 こうした”トイレ不在”のヨーロッパを旅するとき、俄然わたしたち日本人の強力な味方となるのが、他ならぬマックである。マクドナルドは、世界にあるすべての店の運営マニュアルで、「トイレの設置」と「トイレの頻繁な清掃」を義務づけており、マックへ足を運べばいつでも気分よくトイレをつかうことができる。

 「マクドナルドのある社会や国は戦争をしない」という有名な言葉があるけれど、街角にマックがあるところなら、尿意・便意にかかわらずほんとうに安心して旅を楽しめるわけである。

 だから、最後にわたしは声を大にして叫びたい。「ぐぁんばれ、マック!!」



旅行作家 小竹裕一


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